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会社に入るときや契約を更新するときに受け取る「労働条件通知書」。2024年4月から、そこに書かれる「労働条件明示」のルールが変わったことをご存じでしょうか。「就業場所の変更の範囲」や「更新上限」といった言葉を見て、何のことかわからなかった人もいるかもしれません。
この記事では、厚生労働省のウェブページ「令和6年4月から労働条件明示のルールが改正されます」と、リーフレット「2024年4月から労働条件明示のルールが変わりました」(2024年9月)をもとに、追加された明示事項を4つのポイントにまとめます。後半の、通知書を受け取ったときの確認の工夫は、この記事の提案です。
※この記事は制度の概要を紹介するもので、個別のケースの判断を示すものではありません。具体的な取り扱いは、ご自身の契約書や勤務先、都道府県労働局や労働基準監督署などの相談先に確かめてください。
2024年4月の労働条件明示のルール改正とは
何が変わったのか
厚生労働省によると、2024年4月から、労働契約の締結や更新のタイミングで明示しなければならない労働条件の事項が追加されました。改正の根拠は、労働基準法施行規則第5条の改正と、有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準(雇止め告示)の改正だと説明されています。
全ての労働者と有期契約労働者
追加された事項には、全ての労働者に対するものと、有期契約労働者(契約期間の定めがある人)に対するものがあります。リーフレットでは、次の4つが新しく追加された明示事項として紹介されています。
労働条件明示の改正を知る4つのポイント
ここでは、厚生労働省のリーフレットから、追加された明示事項を4つにまとめます。
1. 就業場所・業務の変更の範囲
全ての労働契約の締結時と、有期労働契約の更新時に、「雇い入れ直後」の就業場所・業務の内容に加えて、これらの「変更の範囲」も明示が必要になりました。「変更の範囲」とは、将来の配置転換などによって変わり得る就業場所・業務の範囲を指すと説明されています。
2. 更新上限の有無と内容
有期労働契約の締結時と更新時に、更新上限(通算契約期間または更新回数の上限)の有無と内容の明示が必要になりました。
3. 無期転換申込機会
無期転換ルールにもとづく無期転換申込権が発生する契約の更新のタイミングごとに、無期転換を申し込むことができる旨の明示が必要になりました。
4. 無期転換後の労働条件
同じく無期転換申込権が発生する更新のタイミングごとに、無期転換後の労働条件の明示が必要になりました。
4つのポイントの早見表
| 追加された明示事項 | 対象 | 明示のタイミング |
|---|---|---|
| 就業場所・業務の変更の範囲 | 全ての労働者 | 全ての労働契約の締結時と有期労働契約の更新時 |
| 更新上限の有無と内容 | 有期契約労働者 | 有期労働契約の締結時と更新時 |
| 無期転換申込機会 | 有期契約労働者 | 無期転換申込権が発生する契約の更新時 |
| 無期転換後の労働条件 | 有期契約労働者 | 無期転換申込権が発生する契約の更新時 |
表の内容は、厚生労働省のリーフレットをこの記事でまとめたものです。
あわせて必要になった説明
更新上限を新設・短縮する場合の説明
リーフレットでは、雇止め告示の改正により、次の場合には、更新上限を新たに設ける理由や短縮する理由を、有期契約労働者にあらかじめ(新設・短縮をする前のタイミングで)説明することが必要になったとされています。
- 最初の契約締結より後に更新上限を新たに設ける場合
- 最初の契約締結の際に設けていた更新上限を短縮する場合
均衡を考慮した事項の説明
無期転換申込権が発生する更新のタイミングごとに、無期転換後の賃金などの労働条件を決めるにあたって、他の通常の労働者(正社員などのいわゆる正規型の労働者や、無期雇用フルタイム労働者)とのバランスを考慮した事項について、有期契約労働者に説明するよう努めなければならないこととなりました。例として、業務の内容、責任の程度、異動の有無・範囲などが挙げられています。
無期転換ルールとは
通算5年を超えると申し込める
リーフレットでは、無期転換ルールを、同一の使用者との間で有期労働契約が通算5年を超えるときに、労働者の申込みにより、期間の定めのない労働契約(無期労働契約)に転換する制度だと説明しています。
更新のたびに明示が必要な場合も
初めて無期転換申込権が発生する有期労働契約が満了したあとも有期労働契約を更新する場合は、更新のたびに、無期転換申込機会と無期転換後の労働条件の明示が必要になると説明されています。
雇止めについての注意
リーフレットでは、無期転換ルールの適用を免れる意図をもって、無期転換申込権が発生する前に雇止めをしたり、契約期間中に解雇したりすることは、労働契約法第18条の趣旨に照らして望ましいものではないと注記されています。
厚生労働省のQ&Aにある細かい点
厚生労働省は「令和5年改正労働基準法施行規則等に係る労働条件明示等に関するQ&A」も公開しています。その中から、働く人にも関係のありそうな点をいくつか紹介します。
すでに雇われている人は?
Q&Aでは、すでに雇用されている労働者に対して、改めて労働条件を明示する必要はないと説明されています。新たな明示ルールは、施行日の令和6年(2024年)4月1日以降に締結される労働契約に適用されるためです。ただし、労働者の理解を深めるために再度の明示を行うことは、望ましい取組と考えられるとしています。
有期契約の更新は「新たな契約」
一方で、有期契約労働者については、契約の更新は新たな労働契約の締結であるため、2024年4月1日以降の契約更新の際には、新たなルールにのっとった明示が必要になると説明されています。
4月1日開始でも3月に契約した場合
Q&Aでは、契約の始まりが2024年4月1日以降であっても、2024年3月以前に契約を締結した場合は、改正前のルールが適用され、新たな明示ルールにもとづく明示は不要だと説明されています。
「変更の範囲」はその契約期間中のこと
就業場所・業務の「変更の範囲」は、その労働契約の期間中における変更の範囲を意味すると説明されています。日雇い労働者については、雇入れ日の就業場所と業務を明示すれば足り、「変更の範囲」を明示する必要はないとされています。
更新回数の書き方
更新回数の上限について、契約の当初から数えた回数を書くのか、残りの回数を書くのかという質問に対しては、労働者と使用者の認識が一致するような明示になっていれば差し支えないとしたうえで、混乱を避ける観点から、契約の当初から数えた更新回数または通算契約期間の上限を明示し、現在が何回目の更新かなどもあわせて示すことが考えられるとしています。
更新上限がない場合の書き方
Q&Aでは、改正後の規則では更新上限を定めている場合にその内容を明示することが求められており、更新上限がない場合にその旨を明示することは要しないと説明されています。一方で、更新上限の有無を書面などで明示することは労働契約関係の明確化に役立つため、厚生労働省のモデル労働条件通知書では、更新上限がない場合にもその旨を明示する様式にしているとされています。
| Q&Aの項目 | 説明の要点 |
|---|---|
| すでに雇用されている人 | 改めての明示は不要。再度の明示は望ましい取組 |
| 有期契約の更新 | 新たな契約の締結なので、2024年4月1日以降の更新では新ルールで明示 |
| 3月以前に締結した4月開始の契約 | 改正前のルールが適用 |
| 変更の範囲 | その労働契約の期間中における変更の範囲 |
| 更新上限の書き方 | 当初から数えた回数や通算期間の上限と、現在何回目かをあわせて示すことが考えられる |
表の内容は、厚生労働省のQ&Aをこの記事でまとめたものです。
通知書を受け取ったときの確認の工夫
ここからは、厚生労働省のリーフレットをもとにした、この記事の提案です。
「変更の範囲」の欄を見る
労働条件通知書を受け取ったら、就業場所と業務について、「雇い入れ直後」と「変更の範囲」の両方が書かれているかを見てみましょう。将来どこで、どんな仕事をする可能性があるのかを知る手がかりになります。
有期契約なら更新上限を確かめる
契約期間の定めがある場合は、更新上限の有無と内容を確かめておくと、今後の働き方を考えやすくなります。
無期転換のタイミングをメモしておく
同じ会社で有期契約を更新している人は、通算契約期間がいつ5年を超えるのかをメモしておくと、無期転換申込機会の明示を受け取ったときに慌てずにすみます。
モデル労働条件通知書と見比べる
厚生労働省のページでは、モデル労働条件通知書の様式も公開されています。受け取った通知書と見比べてみると、どの欄に何が書かれているのかがつかみやすくなります。
書類は保管しておく
労働条件通知書や契約書は、更新のたびに内容が変わることがあります。受け取った書類はまとめて保管しておくと、あとで見比べるときに便利です。更新のたびに、前回の通知書と比べて変わった点がないかを確かめる習慣をつけておくと安心です。
労働条件明示のよくある質問
正社員にも関係ある?
就業場所・業務の変更の範囲の明示は、全ての労働契約の締結時が対象です。有期契約に限ったものではありません。
「変更の範囲」とは?
将来の配置転換などによって変わり得る就業場所・業務の範囲を指すと説明されています。
無期転換ルールとは?
同一の使用者との間で有期労働契約が通算5年を超えるときに、労働者の申込みにより、無期労働契約に転換する制度です。
すでに働いている人にも新しい明示が届く?
Q&Aでは、すでに雇用されている労働者に改めて明示する必要はないとされています。ただし、有期契約の人は、2024年4月1日以降の契約更新の際に新しいルールにのっとった明示が必要になると説明されています。
更新上限がない場合は?
規則上は、更新上限がない場合にその旨を明示することは要しないとされています。ただし、厚生労働省のモデル労働条件通知書では、上限がない場合もその旨を明示する様式になっています。
明示されていないときの相談先は?
厚生労働省のページでは、制度改正の内容や労働条件明示がされないなど労働基準法違反と思われる場合の相談先として、都道府県労働局(監督課)や全国の労働基準監督署が案内されています。無期転換ルールや労働契約に関する民事上の紛争については、都道府県労働局(雇用環境・均等部(室))が案内されています。
労働条件明示の改正を知って安心して働こう
2024年4月から、労働条件明示のルールが変わり、就業場所・業務の変更の範囲、更新上限の有無と内容、無期転換申込機会、無期転換後の労働条件の4つが明示事項に加わりました。労働条件通知書を受け取ったら、これらの項目を確かめ、わからないことは勤務先や労働局などの相談先に問い合わせてみましょう。